アリストのブログ_意味がある文章

生活の中で考えたこと、本の話等。INTJ。I am my choices.

「今、ここ」以外の世界を知ったら、人生の選択肢が増える。だから読書は面白い。最近読んで面白かった本の紹介

読む量を減らして他のことに時間を使ったほうが良いと思ったのだが、それから3カ月程度でまた40冊程度読んでしまった。読むことは楽しいし、後悔しにくい。日本と世界を理解するために面白いと思った本を紹介したいと思う。

 

「今、ここ」の生き方しか知らなければ、「今、ここ」をそのまま受け入れて生き、死んでいく。「今」以外の世界、「ここ」以外の世界を知った上で、自分たちはどう生きたいのか考えたほうが、後悔少なく暮らせるのではないかと思う。改めて言語化すると、それが自分が本を読む動機なのかもしれない。

 

愛新覚羅浩『流転の王妃の昭和史』

大正三年生まれの嵯峨侯爵家の長女が、ある日突然、満州国皇帝溥儀の弟である溥傑の妃となることが決まる。愛新覚羅の始祖は後金の創始者であり清の初代皇帝であるヌルハチ。日本が満州国を成立させたことで、その愛新覚羅家に日本人が嫁入りすることになる。当人である愛新覚羅浩自身が記載する、大正~戦後の記載が生々しい貴重な資料。過去の満州国エリアや日本の様子が分かるという歴史的な価値もあるが、個人としての壮絶な人生を読むことを通して、自分たちはどう生きるべきなのか改めて考えさせられる。現代の日本では、様々な努力と幸運の結果、多くの人が平穏な暮らしが出来ているが、それは当たり前のことではない。他国の歴史もそうだが、日本の過去を読むことを通してもそういうことが改めて感じられる。

 

阿満 利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』

アメリカ人の3割程度は、週に一度は教会やモスクを訪れるらしい。そういう日本人は少ない。この本によると、かつては仏教に死後の救いを求めていた日本人は、現世中心主義の儒教の導入に伴って、現世の行動が宗教に規定されることが減ったらしい。統治者の論理として、仏教は生産性が低く、儒教を広めたほうが統治しやすいということはたしかにあったと思う。また、民衆の生活が豊かになるにつれて、限りある今を楽しもうという浮き世の思想が広まる。井原西鶴は今流行りのFIRE(早期退職)を提唱していたと解釈できるような記載もあり、面白かった。この本が出版されたのは20年以上前なので、まだFIREは流行っていなかった。更に、明治維新を通して、国として集権化するために国家神道が提唱され、既存の宗教が日本人から切り離されたことも、日本人の宗教意識を弱めることに繋がったらしい。

自分は比較的生きる意味や人生について考えることが多いほうだと思うが、人生の機軸を信仰に置こうと考えたことはない。信仰を基軸として生きるとはどういう感覚なのか、それを試すことは簡単には出来ない。キリスト教の歴史や、現代を生きる信仰者の生活や人生についても研究してみたいと思った。

 

橋本治浄瑠璃を読もう』

仮名手本忠臣蔵』、『義経千本桜』等、浄瑠璃の人気作を解説してもらえる本。橋本治によると、浄瑠璃は日本の近代小説の先祖らしい。文楽ユネスコの世界無形文化遺産にもなっている。なお、文楽というグループが提供する浄瑠璃文楽と呼ぶらしい。この本を読むと、現代人と通じる江戸時代の感覚、現代人からしたらよくわからない江戸時代の感覚、その両方を見ることが出来て面白い。また、こういうコンテンツがあったということを日本人として認識できて良かったと思った。こういうものを町人が楽しんでいた江戸時代の大阪や江戸は豊かな都市だったのだろうと思う。

私は文楽は過去に2度程度見たことがあるが、正直眠くなってしまった。浄瑠璃は、台本、義太夫の語り、三味線、人形の4つの要素から成り立つが、今の現代人が生で見て意味を理解する難易度は高い。まずは、文章や解説を通して意味を理解したほうが、現代人としては親しみやすい。

 

新城道彦朝鮮半島の歴史 政争と外患の六百年』

白村江の戦い、高麗・李氏朝鮮対馬侵攻、秀吉の朝鮮出兵日韓併合等、地理的に近い朝鮮半島は、日本史とも密接に関わっている。この本では、朝鮮半島が分断に至った歴史を叙述することを目的に、14世紀の朝鮮王朝の建国に遡って歴史を見ていく。簡単にまとめてしまうと、中国、ロシア、日本等に挟まれて位置していること、国内での政争・内乱が多かったことが現在の分断状況に繋がっているらしい。中国やインド、インドネシア等、他の国の歴史を見てよく思うのが、近代以降の日本は国内での対立関係(民族、宗教、政治等)が他国と比べて少なく、大規模な内紛がほとんどない。それが日本の繁栄に繋がっているが、自分のように不勉強で他国の歴史をあまり勉強していないと、その特殊性は実感しにくい。よく言われる話ではあるが、他国と比べることで日本が分かるようになる。

 

三浦清美『ロシアの源流 中心なき森と草原から第三のローマへ』

日本と隣接する国であり、直近ではウクライナへの侵攻で注目されているロシアだが、その歴史は複雑。この本では近代以降の話はほとんどないが、モスクワがどのように「ルーシ」の中心地になったのかの記載が豊富で面白く読めた。軍事力、宗教的権威、経済力、周辺の強国との関係が影響する。歴史的にはモンゴルに支配されたり、当時の西側の強国、ポーランドリトアニアに苦しめられたりしてきたエリアの人々の一部が、ロシアという世界的な大国を作り上げたと考えると興味深い。日本は島国のため特殊なところがあるが、他エリアの歴史を学ぶと、改めて国土や国境は常に変動するものと思い出させられる。日本も北方領土尖閣諸島竹島等の領土問題を抱えているが、内陸国のプレッシャーはより大きいだろう。

 

子供の頃から、抽象的なことや、過去や未来、フィクションなど、「今、ここ」以外のことに関心が強かった。最近、個人としての経済状況が落ち着いてきたこと、結婚したことで、自分は次は何に向かっていくか、もう一度考える段階になった。そういう状況下で、日本や世界の今に繋がっている過去を理解したいという気持ちが強まった。

そういうことを知りたいと考える人と、興味がない人がいるわけだから、人の興味関心や楽しみは本当に違いが大きいと再実感する。

「今、ここ」しか見ていない人は、「今、ここ」を当たり前のものとしてそのまま生きて、そのまま死んでいってしまうのではないか。他国や過去を学ぶことで、今の日本の生き方は当たり前のものではないし、他の生き方もあることが再実感できる。そうやって視野を広げた上で、改めて自分はどう生きるのか考えていったほうが、後悔少なく生きられるのではないかと思う。

■書いた人:Aristo 

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